「リノベーションの発想による地域価値の再生」というタイトルで、大島芳彦さんの講演会が室蘭工業大学でありました。
私は不勉強で知らなかったのですが、大島さんはプロフェッショナル仕事の流儀にも出演されていたり、リノベーションスクールを開催するなど、とても名の知れた方。
行ってよかった!!とても勉強になり、刺激をもらいました。
感想を3つにまとめてお伝えします。
①関係性・システムのリデザイン・再編集
昔は社会は、私の領域、公の領域、コモン領域と3つの領域が互いに重なり合っていました。
しかし、高度経済成長などさまざまな変化の中で、その領域が分断されています。これは宮台真司先生のご著書『経営リーダーのための社会システム論』と同じ状況を指していると思います。
そういう社会の分断をどう再編集していくか。
建築でどう仕掛けをつくっていくか。
たとえば、”まちのにぎわいづくり”という用語はよく耳にしますが、この”にぎわい”は何を指すのかずっと疑問に思っていました。
繁盛店ができればいいのか。
空き店舗が埋まればいいのか。
人がただ集まればいいのか。 等
今日の講演を聞いて、まちは人と人とのつながりを再構築する場所であり、それをマネジメントするのが”まちづくり”であると知り、すごく腑に落ちました。
②あなたでなければ~ここでなければ~今でなければ~3つの要素を整理する。
今までの社会は、
あなたでなくてもOK,ここでなくてもOK,今でなくてもOKが豊かな社会であり、こちらを目指してきたと言います。
確かに、バイパスの沿道にある店はどこでも同じような感じだし、セルフレジが増えてきているように、店員さんも誰でもよい、、、そういう流れが加速している気もします。
だからこそ、選ばれるまちは
あなたでなければ
ここでなければ
今でなければ
を掘り起こす必要があります。
そのためには、オンリーワンの共通ビジョンが必要で、そのビジョンへの共感・コミットが仲間をどんどん増やしていきます。
まさに、シビックプライド(まちへの誇り)をどう取り戻していくか。
そのためには、「消費者を当事者へ」変えていく必要があるとのことです。
まちの当事者として、このまちのビジョンを共有していく。
そのプロセスでシビックプライドも持つことができる。
自らが当事者としてまちに積極的に関わる姿勢。
まさに”あなたでなければ”ならないのです。
私にとって「当事者」という言葉は、すこし重く感じていました。
そこに”義務感”を感じてしまうからです。
でも今日の事例を聞いていて、日常で自然に行っている行為や、やりたいことをまちでやることも「当事者」なのだとわかりました。
まちに参加可能な場があって、自然に関わりが増える行為が増えていく。
そういう空間を作ることが出来る建築の力は本当にすごいです。
③帰納法ではなく演繹法で
従来の方法は、市民からの”ないものねだり”の多数の意見をコンサルがまとめる、という流れだそう。そうすると、総花的になるし、まとまりがないのは想像できます。
大島さんたちは、まず、仮説を立て、検証し、その結果共感がうまれる、という流れだそうです。検証の結果が間違っていたら、あらたな仮説をまた立てる。その繰り返し。
検証の過程で、市民はまちの資源を再確認でき、そのプロセスが共感につながるのだな、と思いました。
自分達にとっては当たり前のことでも、外の視点からは宝に見えることがある。そういう視点の違いに向き合うことで、市民もその宝に気づくことができます。
”ないものねだり”ではなく”あること探し”ということだと思います。
その”あること=資源”は、人であり、文化であり、歴史であり、自然など。
人の流れや交通手段も加味した、すこし俯瞰的な視点が必要だと感じました。
いかに今までの自分の視野が狭かったか、そのことにより閉塞感を感じていたと改めて気づけました。